キッコーマンニュートリケア・ジャパンXAfternoonge project

私たちの更年期を楽しい10年に 私らしく輝こう

私の更年期、重い?軽い?
「評価表」でチェックすると?

2023年 6月 19日

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • Pinterest

更年期は一般に閉経前後のそれぞれ5年、合計10年を指しますが、その閉経も最終月経から1年たって初めて判断できるため、自分がいつ更年期に差し掛かったのかは非常にわかりにくいものです。
仮に更年期症状として知られる「ほてり」が出てきたとしても、それが本当に更年期症状なのか、単なる体調不良なのかは自己判断しにくいですよね。
「私たちが抱えるさまざまなトラブルに親身に寄り添い、納得いくまで受け止めてくれる」と定評の高い東京歯科大学市川総合病院 産婦人科 准教授 小川真里子先生に、更年期の症状把握のスタンダードである「更年期症状評価表」(日本産科婦人科学会)を参照しながら「この状態であれば来院を」という目安を教えていただきました。

INDEXINDEX

更年期っていつから、
どんな症状で始まるの?

これって更年期?老化? 実は、
更年期を見極める目安があります

どの程度の症状なら病院へ行っていい? 
病院の選び方は?

病院へ行くときに
準備しておくといいものは?

自分でできる更年期対策は?

更年期ケアの最大のポイントは
「更年期を知る」こと

更年期っていつから、
どんな症状で始まるの?

更年期は、閉経前後の前後5年と定義されています。閉経年齢の中央値は50.54歳ですから、更年期の入り口は45歳ごろからが多いといえます。ですが、来院が増えるのは40代後半である48歳、49歳くらいからです。まずは、私の外来へいらした患者さんたちがよく訴える症状を順番に説明しましょう。

① ホットフラッシュ、ほてり、のぼせ

44歳、45歳ごろの初期にまずみなさんが気づくのは、生理周期や量の変化です。月経の間隔が長くなってくる方が多いです。次に気づくのは、上半身のほてりやのぼせ、また突然発汗が起きるホットフラッシュという症状です。それ以前になかった症状なので気づきやすいのですね。

ホットフラッシュも現れ方は人それぞれで、まわりの人は平気そうなのに自分だけが暑くて滝のように汗が流れたり、快適だと感じる気温の幅が狭くなったりします。寝ている間に起こる人も、日中や夜に起こる人もいます。

② 不眠、睡眠のトラブル

更年期障害の症状が始まるタイミングは人それぞれ異なります。例えば、不眠から始まる人もいます。寝つきが悪くなる、朝早くや深夜に目が覚めるといった変化です。不眠は更年期の精神的症状として起こりうる変化の一つですが、疲れや老化、ストレスなどからくる不眠との違いはわかりにくいのが現状です。

不眠に悩む場合は、更年期を疑うよりも先に、心療内科や睡眠外来を受診する人が多いと思いますが、私はそれでもいいと思います。そこで診断がつけば、原因は更年期ではなかったとわかりますし、不眠の治療ができますので。

ただし、専門の科以外で処方される、抗不安薬を漫然と飲み続けることだけは避けてください。不眠の根本的な解決にはなりませんので、精神科、心療内科など専門医にかかることが重要です。

③ 動悸、めまい

動悸やめまいも初期によくある症状です。めまいは、天井がぐるぐる回るようなタイプではなく、ふわふわとして足が地に着かず、ふとした瞬間に倒れてしまうような感覚に襲われるケースが多いです。動悸は寝ているときなどに感じる人が多いようです。どちらもとても心配になる症状ですが、自然に落ち着くようなら、ほとんどの場合は問題はありません。

④ 手足の冷え

また、手足の冷えも、よく起こる更年期症状の一つです。体の中心部分は暑いのに、手足だけ冷える方も多いです。手足の関節がこわばったり、しびれたりする人もいます。

⑤ イライラ

イライラや気分の落ち込み、漠然とした不安感といった精神症状も、とてもよくみられます。

⑥ 性交のトラブル

性交痛や性欲の減退を感じ始めたりするケースもあります。

これって更年期?老化?
実は、更年期を見極める
目安があります

更年期症状は、原則として「女性ホルモンの分泌低下で起こる症状」を指します。更年期症状として腰痛や肩こりが挙げられることもよくあるのですが、まず、腰痛と更年期はほぼ関係ないといえるでしょう。多くの腰痛は、女性ホルモンの変化とは関係ない理由で起こります。肩こりも、更年期というより、運動不足で血行不良になっているか、老化によるものが多いように感じます。

女性の更年期は閉経を基準に考えられた期間ですが、肩こりは男性にも起こりますよね? つまり「女性ホルモンを補充して治療できるかどうか」が、更年期症状であるか、それ以外かの目安の一つになります。物忘れや老眼も、更年期ごろによく起こる症状ではありますが、月経の変化に関係なく起こりますので、更年期症状とは考えにくいです。

ただ、物忘れの中でも、頭の中に霧がかかったようなもやもやとした状態になって集中力が低下したりする「ブレインフォグ」という症状は、HRT(女性ホルモン補充療法)で改善するケースがあります。

反対に、性欲は女性ホルモンを補充しても回復しにくい傾向があります。性欲は男性ホルモンに左右されることが多いと言えます。性交痛は、HRTによって腟のうるおいが増えることで軽減できる可能性があります。

太りやすくなるのも、ホルモンが少し関係しています。中年の男性がよく、ぽっこりおなかになりますよね。男性は皮下脂肪より内臓脂肪がつきやすく、おなかにたまっていきます。女性も、女性ホルモンの低下にともなって男性ホルモンの体内比率が増えることで、おなかに肉がたまりやすくなります。内臓脂肪は、残念ながら運動しても落ちません。食べる量を減らしてコントロールしましょう。スイーツは控えたほうがいいですが、たんぱく質や適度の炭水化物など必要な栄養素はきちんととってくださいね。

どの程度の症状なら
病院へ行っていい? 
病院の選び方は?

「症状はあるが、病院に行くほどではないように思う」「どの程度までひどくなったら病院へ行けばいいかがわからない」という声をよく聞きます。実は、明確な境界線はありません。更年期症状のために何かしら支障を感じていて、治療したいと感じたら、そのタイミングでいいと思います。更年期症状評価表に一つでも当てはまる項目があれば、病院へ行きたいと思ったときに行ってかまいません。

病院は、確実に更年期障害を診察してくれる更年期外来や、産婦人科の中でも更年期障害を診察項目に挙げているところがお勧めです。日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医リストがWebで公開されていますので、そこから専門家を探すこともできます。更年期女性のお話を聞くことを大事にしている医師も数多くいます。話すだけで楽になる患者さまもいます。家族や職場に言えず悩んでいる人や、つらいのに無理をしている人は、ぜひ一度、医師に相談してください。

通える場所に更年期外来がない場合は、一般的な産婦人科を頼ってください。ただし、産婦人科の中には、更年期診察を中心とはしてない医院もあります。医師と話してみて「自分に合わない」と感じたら、遠慮せずにほかの病院を探してください。

「最初から婦人科受診はハードルが高い」と内科や整形外科へ行くこともあると思います。更年期障害は除外診断といって、ほかの病気がないことを一つずつ検査でルールアウトしていき、何もなかった場合の最後に更年期だと判断します。漠然とした不調であっても何かしら疾患が見つかって診断がつけば治療の道がわかって安心ですが、どの科でも不調の原因に診断がつかない場合は一度、更年期の専門医にも相談してください。

日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医リスト
https://www.meno-sg.net/speciallist/link/1139/

病院へ行くときに
準備しておくといいものは?

更年期の症状は本当に人それぞれ違うので、初めての病院では、これまで起きた症状や、いつごろから感じたか、持病や手術歴があるか、常用している薬、漢方、サプリメントの名前などをメモ書きして持参すると、より的確でスムーズな診察ができます。

病院では、医師に遠慮せず、気になっている症状や悩み、どうしたいかの意思表示をはっきりすることが、よりよい結果につながります。

更年期外来へ行く前に受けた内科や耳鼻科、整形外科などの診断内容も、更年期の除外診断として役立ちますので情報を提供してください。

自分でできる
更年期対策は?

更年期とそれ以降の人生を健やかに過ごすために、適度な運動・栄養バランスの整った食事・規則正しい生活は意識してほしいポイントです。更年期に適した運動や食事の基準はありますが、ゼロから始めるには少しハードルが高くいので、できることから少しずつ始めることをお勧めします。

例えば、ジョギングや水泳、エアロビクスなどの有酸素運動は、国際閉経学会の指針では週150分以上を推奨しています。まったく運動していない人にとっての週150分は、ちょっと難しいですよね。無理をしてストレス過多になり、「自分はダメ人間だ」と気分が落ち込むくらいなら、まずは通勤を早足にしたり、一駅分歩いたり、ストレッチしたりすることから始めてください。更年期から先の人生を健やかに過ごすには、まず運動習慣をつけることが大切です。膝痛や体力低下が起きてからでは、ますます始めるのが難しくなります。これを機に、運動習慣をつけましょう。

食事は、栄養素をバランスよくとれて塩分控えめな和食が理想です。オリーブオイルやナッツ類、野菜や魚などを使う地中海料理もいいですね。ですが、毎日が忙しい多くの女性にとって、栄養バランス完璧の食事を毎食作るなんて、現実的ではありません。ときには、加工食品を使ったり足りない栄養素をサプリメントで補ったりしてもいいんです。できる範囲から始めて長く続け、習慣にするほうが大事です。

また、複数のサプリメントを飲んでいる更年期女性をしばしば見かけます。ですが、あまりに多種類を飲むと、どれが自分に合っているか判断できませんよね。かといって、すでに複数飲んでいる人は、どれを減らせばいいかわからないでしょう。サプリメントを使っていても不調を感じているなら、そのときこそ専門家に頼るチャンスです。

更年期ケアとしてサプリメントを利用するなら、植物性の女性ホルモン作用をもつサプリメントに絞ってみるのも一手です。また、サプリメントは飲み続けることで本来の機能を発揮するので、気分によって種類を替えることはお勧めしません。

そして、睡眠も大事です。寝る前にスマホを見ることをやめるだけでも、入眠しやすくなります。

更年期ケアの最大のポイントは
「更年期を知る」こと

いま更年期の症状を感じている世代の多くの女性は、更年期について学校などで教わったことがありません。だから、どうしたらいいかわからず不安になるのです。

閉経はいつ頃くるか、月経はどうやって終わるか、いま自分が更年期のどの辺りにいるか、更年期障害にはどんな症状があるかなどを確認し、困ったときの相談先を見つけておくことで、対処しやすくなります。相談先は、かかりつけ産婦人科があれば心強いですし、同世代や先輩世代と話すだけでも、新たなケア方法や考え方、いい病院の情報などを得られます。

更年期障害は、多くの女性が経験するものです。恥ずかしいことでも、あなたが悪いわけでもありません。一人で悩まず、誰かに話したり、専門家に相談したりしてみてくださいね。

PROFILE

東京歯科大学
市川総合病院産婦人科准教授
小川真里子先生

1995年福島県立医科大学医学部卒業。慶應義塾大学病院での研修を経て、医学博士取得。2007年より東京歯科大学市川総合病院産婦人科勤務、2015年より同准教授。2022年より福島県立医科大学 特任教授。日本女性医学学会ヘルスケア専門医、指導医、幹事。日本女性心身医学会 認定医師・幹事長・評議員。日本心身医学会 心身医療専門医・代議員。

取材・文/力武亜矢 撮影/畠山あかり

TOPページに戻る